「ねぇ、この画像、画面では明るく見えたんだけど、印刷したらめっちゃ暗くない?」
「申し訳ありません。限界なんです」
印刷現場では当たり前のことも、クライアントにとってはちょっとした驚きだったりします。
この記事では、“色が違って見える問題”の背景を、できるだけやさしく解説してから──
クライアントには言えない、本当の解決方法についてお話します。
はじめに:よくある印刷現場の声
「PDFでは綺麗に見えたのに、なんで印刷したら暗いの?」
「スマホで見た画像と全然色が違う!」
印刷や広告制作の現場では、令和になった今でもこういった声が少なくありません。
本記事では、この“色の違い問題”がなぜ起こるのか、どう説明すれば納得されやすいのか、
そしてどう防げるかを整理します。
RGBとCMYKの違いを知ろう
RGB:画面で見るための色
- 光の三原色(Red, Green, Blue)で構成
- スマホやPC画面はすべてこれ
- 明るく鮮やか、蛍光色や強い発色も出せる
CMYK:印刷で使う色
- インキの4色(Cyan, Magenta, Yellow, blacK)で構成
- 発色に限界あり。特に蛍光色や明るい中間色が沈む
→ つまり、見ている環境が違うから「同じ画像」でも見え方が違って当然
「明るく見える画像」=「印刷しても明るい」とは限らない
「暗くなる条件が重なっている」ように見えるかもしれませんが、これは意図してそうしているのではなく、印刷というメディアの特性による“避けられない現象”です。
- 多くの画像素材(ストック/写真/Web)はRGBで作られている
- PDFはRGBのまま見せていることが多く、見た目が綺麗
- 実際に印刷されると、CMYK変換時に彩度や明度が下がる
- さらに、紙という“光を発しない媒体”に出力されることで、画面よりも暗く沈んで見えることが多い
よくある誤解とその正しい伝え方
クライアントの言葉 | 本当の意味 | デザイナーの対応例 |
---|---|---|
「明るくして」 | PDFやスマホと同じ発色にしてほしい | CMYKでは限界があることを事前に共有 |
「もっとポップに」 | 鮮やか・派手に見せたい | 補色の使い方や色数の工夫で明るさを演出 |
「色が沈んでる」 | 思ったより暗い/くすんでる | 印刷前にCMYKシミュレーションや調整案を見せる |
本当は何を求めているのか?を一緒に考える
「明るくしてください」「もっとポップに」——よくあるリクエストですが、
実は“写真を物理的に明るくしてほしい”という意味ではないこともあります。
たとえば、夏らしくて元気な印象にしたい、イベント感を出したい、季節に合った雰囲気を伝えたい……
そんな“イメージ”を共有するために、クライアントは自分なりに画像を探して持ってきてくれているのかもしれません。
でもその画像が印刷には不向きだったり、暗く沈んでしまったりすると、
「イメージが伝わらなかった」となってしまう。
このとき大切なのは、単に画像を補正したりテクニカルに調整することではなく、
「本当に求めている印象はどんなものか?」を一緒に言葉にして確認することです。
クライアントの持つ“感覚”をプロの視点で言語化して、できる表現を一緒に探す——
それが、印刷の仕上がりを良くするだけでなく、信頼につながる伴走になるのだと思います。
まとめ
印刷の色は“物理現象”であって、感情や希望ではコントロールできません。
だからこそ、クライアントとのコミュニケーションでは「なぜ違って見えるのか?」を
きちんと伝えることが大切です。
そのうえで、私たちデザイナーができる工夫はまだまだあります。
“色の違い問題”を逆に信頼を高めるチャンスに変えていきましょう。
印刷の色は“物理現象”であって、感情や希望ではコントロールできません。
だからこそ、クライアントとのコミュニケーションでは「なぜ違って見えるのか?」を
きちんと伝えることが大切です。
おまけ:伝えきれない、本当のお願い
「PDFが綺麗なのは、光で見てるからなんです。印刷はインキと紙の物理現象なんですよ」
でも、それだけじゃない。
「この写真じゃなくてもいいんだけど、なんかこう…夏っぽくしたかったんです」
——そう言ってくれたとき、はじめて本当に“してほしいこと”が見えてきます。
私たちが向き合うべきなのは、色そのものではなく、
その色を通して伝えたい感情や空気なのかもしれません。
夏によくある話でした。現場より、以上です。
※アイキャッチには、イラストACのエトユニグラフィックさん(作者ページ)の素材を使用しています。
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