本がすごく好きというわけではないけれど、小説の“読みかけ”がそばにある日常を送っています。
そんな中でも、ごくたまに「読み出したら止まらない」本に出会うことがあります。
読むのはゆっくりですが、気づけば夜が明けていたり、ラストで「え〜っ!」と声が出たり。
満足と同時に、読み終えてしまったことへのちょっとした喪失感も残ります。
この記事では、そんなふうに印象に残った5冊を、
「記憶を消してもう一度読みたい本」として紹介します。
※※ 注意 ※※
この記事では作品の結末には触れていませんが、感想のなかに「察し」のヒントが含まれているかもしれません。これから読む予定の方は、あたたかい目で流してください。
『わたしを離さないで』カズオ・イシグロ
一見、寄宿舎青春小説。でもその内側にあるのは、とてつもなく静かで残酷な運命。読んでいくうちにじわじわ真実が明かされて、「ああ、そうだったのか…」と心がふるえる。気づいたら、ラストシーンを繰り返し思い出してしまっている。
『容疑者Xの献身』東野圭吾
これはただの推理小説ではない。天才数学者が見せた“愛”の形に、読み終わった後もしばらく動けなかった。途中までの自分を殴りたいくらい、あの伏線回収にやられた。再読したくなるけど、やっぱり初読の衝撃には勝てない。
『騎士団長殺し』村上春樹
ちょっと長い。でもその長さがいい。“顕れるイデア”や“メタファー”に振り回されながら、自分の記憶や過去にも向き合う感覚。なんだか夢のなかを彷徨っているような不思議な読書体験だった。
『満願』米澤穂信
短編なのに、どれも読後にガツンとくる。中でも表題作「満願」は、静かに狂気を感じさせる結末でゾワゾワ。思わず、人に「あれ読んだ?」って話したくなる本。夜に読むとちょっと眠れなくなる。
『砂の女』安部公房
なんでこんな話が、こんなにおもしろいんだ?と途中で不安になる。「意味があるのか、ないのか」そんな問い自体が砂に飲み込まれていく感覚。読後は、自分も砂の中にいた気がして、現実に戻るのに時間がかかった。
おわりに:記憶は消せなくても、心はまた動く
小説って、不思議です。
ストーリーは時間とともに薄れていくのに、あの時感じた気持ちだけは、ちゃんと残っている。
今回紹介した本たちは、そんな“心の余韻”が忘れられない5冊。
読み終わったときの「終わっちゃった…」という寂しさも含めて、全部大切な体験でした。
もし記憶をリセットできるなら、もう一度、初めて読むときの気持ちで味わいたい。
でも現実にはそれは叶わないから、今の私で、またページを開いてみようかなとも思います。
まだ読んでいない、幸せな方へ。
あなたにも、そんな一冊が届きますように。
※アイキャッチには、イラストACのエトユニグラフィックさん(作者ページ)の素材を使用しています。
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