和歌山県田辺市にある鈴屋の「デラックスケーキ」。
この名前が、なんともいい。
今なら「プレミアム」や「リッチ」と名付けそうなところを、堂々と「デラックスケーキ」。昭和の、まだ洋菓子が今ほど身近ではなかった頃を思い出させる名前だ。
以前、私はこのお菓子をよく人に贈っていた。意外と知らない人が多く、初めて食べたという人にも喜んでもらえた。見た目は少し懐かしいけれど、食べるとちゃんとおいしい。そんなところも気に入っていた。
「デラックス」という言葉が持っていた特別感
昭和の頃、「デラックス」という言葉には独特の響きがあった。
デラックスなホテル、デラックスな料理、デラックスな詰め合わせ。今となっては少し古めかしい言葉だけれど、当時はそれだけで豪華で特別なものを想像させた。
デラックスケーキという名前も、そんな時代の空気をまとっている。
何のケーキなのかを細かく説明しているわけでもない。ただ「デラックス」なのだ。その潔さが、今見ると妙に新鮮に感じられる。
昭和の高級感がそのまま残っている
デラックスケーキは、包装にも昔ながらの雰囲気がある。
今の洋菓子店では、余白を生かしたシンプルな包装や、控えめなロゴをよく見かける。一方、デラックスケーキには、かつての贈答菓子らしい華やかさがある。
今風に洗練させようと思えば、いくらでも変えられるだろう。
でも、あの名前と包装が一緒になっているからこそ、デラックスケーキなのだと思う。
一周回って、新しく見える
デザインには流行がある。
少し前まで古く見えた書体や配色が、何十年か経つと新鮮に見えることがある。最近の昭和レトロ人気も、その一つかもしれない。
ただ、昔風に新しく作ったものと、実際に長く続いてきたものには違いがある。
デラックスケーキの魅力は、レトロを演出しているのではなく、商品そのものに長い時間が積み重なっているところだと思う。
「一周回って良い」という言葉が、よく似合う。
贈り物として、ちょうどいい意外性がある
このお菓子を人に贈っていたのは、単に珍しいからではない。
知らなかったお菓子をもらい、食べてみたらおいしかった。そんな小さな発見を楽しんでもらえるところがよかった。
中身は、しっかりしたカステラに特製のジャムを挟み、ホワイトチョコで包んだもの。和菓子とも洋菓子とも言い切れない、少し不思議な組み合わせだ。
高級ブランドの有名なお菓子とは、また違った贈り物になる。
贈った相手がその商品を覚えていて、今度は誰かに贈る。そんな広がり方も、小さなお菓子屋さんには似合う気がする。
小さなお店も、無理に新しくする必要はない
お店のロゴや包装紙、看板などを長く使っていると、そろそろ新しくした方がいいのでは、と考えることがある。
もちろん、古くなって読みにくいものや、今のお店の内容と合わなくなったものは見直した方がいい。
ただ、昔から使っているという理由だけで変えるのは、少しもったいない。
お客様が覚えている色や文字、商品名には、長年の積み重ねがある。新しいデザインにすると、その記憶まで失ってしまうこともある。
特に地域の小さなお店では、昔から変わらない看板や包装が、その店を見分ける目印になっている場合も多い。
新しくするなら、何を残して何を変えるか。そこを考える方が、単に今風にするより面白い仕事になると思う。
まとめ|「デラックスケーキ」は、やっぱりデラックスケーキ
鈴屋は大正13年創業の老舗菓子店で、デラックスケーキは今も代表的な商品として販売されている。
「デラックス」という名前も、あの懐かしい包装も、今となっては商品の個性になっている。
もし今、新商品の名前を考える仕事で「デラックスケーキ」という案が出てきたら、私は採用するだろうか。おそらく、もっと別の名前を考えてしまいそうだ。
でも、長く愛されてきた商品を目の前にすると、その名前が実によくできているように思える。
新しい名前やデザインを考えるだけが、ブランディングではない。
変えないことで残る魅力もある。
久しぶりに、あのデラックスケーキを誰かに贈りたくなった。


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