広告から見える今の空気感
昔、「1/fゆらぎ」という言葉が流行った。
白か黒かではなく、その間にある曖昧さや心地よさを表現する考え方だ。
理論はもう覚えていない。説明しろと言われてもできない。ただ当時は、その考え方が世の中に受け入れられていた。広告にもよく登場していたし、「なんとなく心地いい」が価値になっていた時代だったように思う。
私は長く広告やデザインの仕事をしている。その中で感じるのは、広告は時代を映す鏡だということだ。
企業は売れるものを作る。広告は売れる言葉を使う。だから広告を見ると、その時代に人が何を求めているのかが見えてくる。
昔は「癒し」「やさしさ」「ナチュラル」といった言葉をよく見かけた。ところが今は「タイパ」「コスパ」「効率化」「比較」「ランキング」といった言葉が目立つ。曖昧さより分かりやすさ。余韻より結論。広告の重心は確実に変わった。
これは企業が勝手に変えたわけではない。企業は人が求めるものを形にしているだけだ。不安が増えれば安心を求める。物価が上がればコスパを求める。忙しくなればタイパを求める。広告は、その時代の欲求を映している。
だから1/fゆらぎが消えたというより、人が求めるものが変わったと考えた方が自然だと思う。
ただ、人間はそんなに単純ではない。
例えば床屋さん。早く終わってほしい人もいる。予約が簡単な方がいい人もいる。一方で、会話を楽しみに来る人もいる。顔を覚えていてほしい人もいる。少し気分転換したい人もいる。
タイパを求める人もいれば、居心地を求める人もいる。実際のお客様は、そのどちらか一方ではない。
だから小さなお店が広告を考えるときは、流行だけを追いかければいいわけではない。
まずは世の中の流れを見る。広告を見る。大手企業が何を打ち出しているかを見る。そこには今の空気が表れている。
その上で、自分のお店のお客様を見る。
もし、自分のお店の強みが分からないなら、お客様が帰り際に言う言葉を思い出してみるといい。
「早くて助かる」のか。
「話せて楽しかった」のか。
「説明が分かりやすい」のか。
「落ち着く」のか。
お客様は案外、お店の価値を教えてくれている。
小さなお店のアクションプラン
広告やチラシを作る前に、次の3つを確認してみてほしい。
① 世の中の流行を見る
最近のテレビCMやネット広告を眺めてみる。
そこには今、お客様が求めているものが表れている。
例えば最近なら、
- タイパ
- コスパ
- 効率化
- 手軽さ
- 安心感
といった言葉をよく見かける。
まずは時代の空気を知る。
② お客様の言葉を集める
次に、自分のお店のお客様が何を褒めてくれているかを書き出してみる。
- 話しやすい
- 早い
- 丁寧
- 分かりやすい
- 落ち着く
口コミや会話の中にヒントがある。
店主が思う強みと、お客様が感じる強みは違うことも多い。
③ 重なる部分を広告にする
世の中の流行と、お店の強みが重なる部分を探す。
例えば、
「タイパ」が流行っていて、お客様から「予約が便利」と言われるなら、それは広告に書いていい。
逆に、
「癒し」が強みなら、無理に効率を売る必要はない。
お客様が感じている価値を、そのまま伝えればいい。
難しいマーケティング理論より、
「世の中が求めていること」
と
「お客様が褒めてくれること」
この2つを書き出すだけでも十分だと思う。
広告デザインを考えるとき、自分の好みだけで作っても届かない。流行だけを追いかけても埋もれてしまう。
大切なのは、世の中が求めているものと、自分のお店が提供できるもの。その重なりを見つけることだ。
広告を見ると、今の時代が見える。そしてお客様の声を聞くと、自分のお店の価値が見える。
小さなお店の広告は、その二つの間で考えるとうまくいくのかもしれない。


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