昔から重いパンが好きだ。
ライ麦がぎっしり詰まったドイツパンや、噛むほど味が出るようなパンを見ると、つい買いたくなる。
近所には、遠方からもお客さんが訪れる人気のパン屋がある。
以前は私好みの重いパンが並んでいて、たまに足を運んでいた。
先日、久しぶりに立ち寄ってみた。
残念ながらお気に入りだった胡桃入りのパンは見当たらない。
代わりに食パンを1斤買ってみた。
持った瞬間、思わず声が出そうになった。
「軽い」
もちろん品質が悪いわけではない。
むしろ今の流行に合った、ふんわり柔らかな食パンだった。
ただ、私が求めていたものではなかった。
「売れる商品」と「選ばれる商品」は少し違う
広告や販促の仕事をしていると、
「もっと多くの人に来てもらいたい」
という相談をよく受ける。
その考え方自体は間違っていない。
ただ、小さなお店の場合、必ずしも万人受けが正解とは限らない。
パン業界でも、「ふわふわ」「やわらかい」「とろける食感」は人気だ。
多くのお客様に支持されやすい。
だから市場全体としては、軽いパンへ向かう流れがあるのだろう。
しかし、その一方で、重いパンを探している人もいる。
私のように。
1.3キロ先のパン屋へ行く理由
もう一軒、少し離れた場所にパン屋がある。
家から約1.3キロ。
スーパーの帰りに立ち寄る程度の距離ではない。
それでも私は時々そこへ向かう。
理由は単純だ。
まだ重いパンを焼いているから。
トングで持った瞬間に分かる。
「ずっしり」
たくさん食べられるパンではない。
万人向けでもない。
それでも、その店には「そのパンが好きな人」が集まる。
私もその一人だ。
小さなお店は「全員」を狙わなくていい
地方で広告制作をしていると、小さなお店ほど
「もっと幅広いお客様に来てもらいたい」
と考えがちだ。
もちろん新規客は大切だ。
しかし、予算も人手も限られる小さなお店が、大手チェーンのように全方位へアピールするのは難しい。
むしろ大切なのは、
誰に選ばれたいのかを明確にすること。
重いパンが好きな人。
昔ながらの喫茶店が好きな人。
手書きPOPを見ると安心する人。
そんな特定のお客様に向けて発信した方が、結果的に強い店になることが多い。
広告は「好きな人を見つけるため」にある
広告というと、多くの人を集めるためのものだと思われがちだ。
でも実際は少し違う。
広告の役割は、
「この店、自分に合っているかも」
と思ってもらうことだ。
全員に好かれる必要はない。
むしろ、好きな人に見つけてもらうことの方が重要だ。
まとめ
帰りがけ、パン屋の看板を振り返る。
「重いパン屋さん、ありがとう」
心の中でそう思った。
小さなお店の強みは、規模ではない。
大手が切り捨てた少数派の好みを、大切にできることだ。
商売は、みんなに好かれる競争ではない。
誰かに強く選ばれる競争なのだと思う。


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